オータムシエル
とある街の駅前メインストリートより少し中道に入ったそのレストラン・秋空亭。昔からあるその店、昼は食べ慣れた洋食で美味しくボリュームのあるランチを、夜は一風変わって重厚なフレンチフルコースを取り扱う、小さいながらに地元でも人気なお店。特に家で何かしらいい事やイベントがあると、必ずそこで食事を、という口に出さないお約束がある家庭もしばしば。シェフでオーナーの秋空氏は老年ながら、嘗てフランスで修業した経験もあり日本人の口に会わせながらもしっかりとしたフランス料理を楽しめる。勿論、料理がおいしいだけでなく、サービスも丁寧で行きとどいている。オーナー夫人の温かい微笑みや優しい気配りなどに癒される客も多かった。
だが、如何せん二人は年を重ね過ぎていた。一度オーナーが倒れてからは、無理せず、数量限定のランチと予約制でディナー客を取り、無理のしない範囲でほそぼそと営業を続けていた。それでも、地元で人気の店だったのは間違いなかった。
が、再びオーナーが倒れ、店には『営業休止中』の看板だけが数カ月ぶら下がるようになった。常連客や近所の住民は再びその店にオーナーが返ってくる事を望んでいたが、遂にその望みは果たされる事は無く、『長年のご愛顧、ありがとうございました』という看板が1枚、哀しげに揺れていた。
そしてオーナー秋空氏の葬儀から3ヶ月後のある夜、店に再び明かりが灯り、哀しげに揺れていた小さな看板はドアより取り外された。『営業開始1週間後より』。
小さな看板の上よりもっと上、【Automne ciel】と新しい店名の看板が其処にはかかっていた。
だが、如何せん二人は年を重ね過ぎていた。一度オーナーが倒れてからは、無理せず、数量限定のランチと予約制でディナー客を取り、無理のしない範囲でほそぼそと営業を続けていた。それでも、地元で人気の店だったのは間違いなかった。
が、再びオーナーが倒れ、店には『営業休止中』の看板だけが数カ月ぶら下がるようになった。常連客や近所の住民は再びその店にオーナーが返ってくる事を望んでいたが、遂にその望みは果たされる事は無く、『長年のご愛顧、ありがとうございました』という看板が1枚、哀しげに揺れていた。
そしてオーナー秋空氏の葬儀から3ヶ月後のある夜、店に再び明かりが灯り、哀しげに揺れていた小さな看板はドアより取り外された。『営業開始1週間後より』。
小さな看板の上よりもっと上、【Automne ciel】と新しい店名の看板が其処にはかかっていた。
第一話「食欲が無い時の栄養補給」
2013/01/15 09:13
(改)
第二話「今の昔のほろ苦さ」
2013/01/30 20:05
(改)
第三話「9種の不可欠アミノ酸」
2013/02/07 04:45
(改)
第四話「過程と結果と精神論」
2013/02/18 03:36
(改)
第五話「習慣ボーダーライン」
2013/03/16 03:54
(改)
第六話「波の花ノスタルジック」
2013/03/24 19:35
第七話「冬はカキフライもおすすめです」
2013/03/25 06:15
第八話「天国の種子、ひとつぶ」
2013/03/28 08:17
第九話「進化と適応のアミューズ・グール」
2013/04/13 14:13
第十話「鳳梨シュウ酸カルシウム」
2013/04/26 06:11
(改)
第十一話「ひと足早すぎる秋の風」
2013/05/13 03:52
(改)
第十二話「王様はその手つきに驚きました」
2013/05/25 07:26
第十三話「水蜜蟠桃ネクタリン」
2013/05/27 19:00
第十四話「新鮮サラダボウル」
2013/06/01 19:00
第十五話「マリオット盲点」
2013/06/07 20:00
第十六話「長期低温発酵時間」
2013/06/11 20:00
(改)
第十七話「桜桃イメージ差異」
2013/06/18 20:25
(改)
第十八話「一口ガトーはストレスの解消に」
2013/06/25 20:00
(改)
第十九話「相反性ミエル」
2013/07/15 18:40
(改)
第二十話「ルセットにアンダーラインを」
2013/09/05 21:53